あっ、やっぱりいらない

阿修羅秀麻呂の初めての申込の時の実話です。新人営業マンは必見です。不動産営業マンの苦労がわかります。また何故不動産営業マンが悪くなるのか?が見えてきます。

阿修羅秀麻呂だって新人の頃があったのです。契約ってこんなに苦労するの?人ってこんなに簡単に裏切るの?


毎日電話300本!

大学卒業して私が入った会社は年間1000億を売り上げる大手デベロッパーとして中央区の本社の他に全国に支店がある会社でした。私は新人研修の一環として新宿支店に多くの同期と共に配属になったのです。仕事は・・・・。そこの支店の部署は山梨のリゾートマンションを売る部署だったのです。新人です。広告の反響なんてもらえません。当然一日中電話帳を片手に電話営業です。
「もしもし〜お忙しい中申し訳ございません。私新宿センタービルにあります○×株式会社と申します〜リゾートマンションいりませんか〜」
「結構です。がちゃ!」
こんな事を毎日朝から夜9時までやっていたのです。一日中です。大体300本位断られると精神的にまいってきます。

作戦変更

1ケ月たっても良い結果なんて出ません。阿修羅は考えました。こんな事電話帳で闇雲に電話してても何時までたっても契約なんかできっこない。ターゲットを変えよう。そして東京在住の山梨県人会の名簿を中心に電話攻勢をしたのです。
「もしもし〜お忙しい中申し訳ございません。○×株式会社の阿修羅と申します〜突然ですが、山梨の石和って知ってます?」
「えっ?知ってます。私山梨出身だから」
「えっそうなんですか?偶然ですね。そこの笛吹川のほとりに温泉付きの〜」
なんて偶然を装って入りこんだのです。

作戦成功!

見事一人の女性が興味あるから話しを聞いてくれるとの事になったのです。その人は自由が丘で学習塾を経営している自称資産家と名乗っていました。アポイントが無いと外にも出られない阿修羅はさっそくアポイントをとって訪問したのです。何百本と何千本とかけた電話のたった1本です。そりゃ鳥肌の立つような思いで阿修羅は有頂天です。今までの苦労なんて一瞬に吹っ飛びました。

初申込

訪問して、パンフレットを見ながら
「いいわねぇ〜すぐ売れちゃうかしら?」との答えに新人阿修羅は言ってはいけないセリフを吐いてしまったのです。「売れちゃうと大変だから早めに申し込みましょう」でした。「とにかく申し込んでください」のセリフは最悪です。申込を取るのが営業ではありません。契約を取るのが営業です。焦っちゃいけませんね。

それから?


「えっ?」新人阿修羅は上司にこう聞き返しました。申込をもらったあと有頂天になって社に戻った新人阿修羅は顧客の内容なんて全然把握していなかったのです。まして物件だって未だ見せていません。しかし新人です。契約の段取りなんてわかりません。申込とったら終わりのような勘違いをしていたのです。それなのに得意になって報告したのです。
上司「それから?」
阿修羅「えっ?」
上司「資金内容だよ!どうやって買うんだよ!」
上司「物件見せたのかよ?」
上司「いつ契約だよ!」
上司「何にも決まって無いジャン。子供のお使いで行ってきたのか?」


上司同行


結局その後はすべて上司が同行してもらえる事になりました。そして購入資金は全国にあるお客様の所有する土地を売却するからそれを購入資金とする事となりました。「私資産家よ」の言葉を信じた新人阿修羅は事の重大さが全然わかりません。翌日から上司と共に物件調査をしに地方行脚に出かけたのです。


こりゃ売れない!


なんと土地と言ったって殆どが原野商法なんかで騙されて購入した地方の土地みたいです。5つもあります。バブルの頃の当時でも2足3文です。その土地をすべて適正価格で売っても当然マンションの購入値格に追いつきません。買い手だっていつ見つかるか分かりません。それでもいくつかは会社の支店長などが「新人の初契約だから」って事で売ってくれたのです。どうやって売ったか?というと抱かせたんです。誰も買わない土地でも会社が圧力をかければ泣く泣く下請けが買ったのです。バブルの頃はよくある話しです。

毎日地方巡業

それでも毎日朝から地方の不動産屋めぐりです。売れない土地を持って回ります。新規契約とかの話しなんてありません。当然です。電話営業だってやっていないのですから。それでも1本の契約を信じていたのです。だってお客様が買うと言っているのですから。












そして1ヶ月すぎました。










契約段取


ようやくリゾートマンションの契約が見えて来ました。地方のお客様の持っている土地(原野)も売れそうです。申込から1ケ月です。新人阿修羅はその営業時間をすべて調査と土地の販売などに費やしたのです。同行してくれた上司もそうです。でも契約です。60数人いた新人ではトップの契約です。リゾートマンションの物件案内もすべて終了して、後は契約だけです。お客様にも(本当は売れそうもない)土地も売れそうだとその旨報告しました。そして衝撃の事実は起きたのです。

















あっ、やっぱりいらない


言葉なんかありません。リゾートマンションの契約の段取りをしに最終の打合せに行った時のセリフです。頭の中はハンマーで殴られたようにガーンとしてます。声も出ません。涙目になります。結婚直前で振られたような感じです。


そういう事だから・・・・・。「ピー」


顔も上げず、代わりに片尻を上げてオナラをしたのです。それもピーって。先方が会話したのはこの2言です。理由は教えてくれません。


殺意ってあるんですね。


「お母さん、人殺しなんて自分には縁の無い世界だと思っていました。まして自分がそんな気持ちになるのなんて夢にも思いませんでした。」でもこれは夢ではありません。現実なのです。殺意って初めて感じました。この1ヶ月間の苦労が走馬灯のように頭に浮かびます。あの電話営業の苦労だって甦ってきます。上司だってそうです。同期の女の子からだって「阿修羅さんすごーい」って言われていたのに・・・・。すべてがこの一言で終わってしまったのです。


契約0


1ヶ月間その契約だけを信じて行動してきた阿修羅は上司と共に月末の会議で怒られる羽目に。簡単に言った言葉は簡単に裏返るんだと実感したと同時に不動産の難しさ、営業の難しさ、その他諸々の精神的な強さを学んだ新人阿修羅でした。


この物語はノンフィクションです。阿修羅秀麻呂の新人の頃のエピソードを掲載したのは新人営業マンに不動産営業を少しでも理解してもらおうと、また購入者からは営業マンの苦労を少しでも分かってもらいたいと思い掲載しています。お互いの気持ちがわかってよりよい不動産購入が出きればできれば幸いです。営業マンもこの中から何かを感じとってくれれば幸いです。

後日談:
その人(もうお客様では無い)から会社に電話がありました。
「リゾートマンションは買わないけど地方の土地だけは売らせてあげるわよ!」
当然断りました。
「うちはリゾートマンション売ってるんです。地方の土地なんて売ってません!売らせてあげるじゃなくて売ってくださいでしょ!」

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